Forum Summary: Global Data Governance

Meridian 180 は、2016年12月にオーストラリアのニューサウスウェールズ大学法学教授フルー•ジョーンズ(Fleur Johns)と弘益大学校経済学教授スン=イン•ジュン(Sung-in Jun)が中心となり、グローバル•データガバナンスに関するフォーラムを開催した。最近のアメリカにおける電子メールのハッキングや不正流出のスキャンダルを受けて、ジョーンズとジュンは、Meridian 180のメンバーにデータの管理方法やデータが個人と制度に及ぼす影響についての問題や掛りあいを広く考えるよう促した。このフォーラムでは、オーストラリア、中国、韓国、アメリカ合衆国や中南米の経済学者、社会学者、計算機科学者、環境科学者や法専門家からなる多彩なグループが幅広い意見交換を行った。この要約で、貢献者から得た識見の概要を簡単にご説明する。

消費者や一般市民が直面するデータに関する課題とは?

リリア•ベネット•モーゼズ(Lyria Bennett Moses)(ニューサウスウェールズ大学法学部)は「データ」と「データ使用」を区別することから話を始め、注意を要するのはデータ使用だと結論づけた。デジタル社会学者デボラ•ルプトンは個人間の「データ意識」の重要性を語り、各自の個人データに関する理解やその構成、そしてそれが生活でどの様な役割を果たすのかを研究する必要があると指摘した。

リンハン•ザン(张凌寒)(東北師範大学法学部)は、各個人が有するデータについての専門的な知識レベルの差を問題として提起した。ザンは、データ管理を保護する為の法制度が考案されたとしても、「データを管理する権利は依然として管理者自らのデータに関する経験と知識に依存する」と発言した。

数名のフォーラム参加者は、データの「再利用性」に関する課題、特にデータが他者の利益を目的として複写•転売されうる場合に、伝統的な所有権概念を適用することの難しさ、を議題としてあげた。ザンは、「データが繰り返し複写•利用しうるなら、それを専有することはできない」と強調した。

データガバナンスの領域に横たわるより幅広い脅威について触れたフォーラム参加者もいた。リー•ビーネン(Leigh Bienen)(ノースウェスタン法学部)は、ソーシャルメディア上で作成されるデータの量は「抑制できないモンスター」だ、と例えた。

データの生成とガバナンスにおける制度的課題とは?


ジンリー•ズー(朱新力)(浙江大学光华法学院教授)とジューヤン•ゾー(周许阳)(浙江大学光华法学院博士号候補者)は共同のプレゼンテーションで、データガバナンスを議論する際のガバナンス、公法•私法、規制とプライバシー尊重の間の交差を指摘した。彼らは、データを収集又は利用する企業間で「社会的な監督のメカニズムを誘引する」ための、「経済的支援、税制優遇措置、市場アクセス等の経済的なインセンティブ」に関する役割を市場が持つべきだと述べた。また、再利用可能な個人情報の価値を前提として、適切に設計された「インフォームド•コンセント」の枠組みが必要だと論じた。

カイ•ジア(贾开)(精華大学)とスティーブン•ハンフリーズ(ロンドン•スクール•オブ•エコノミクス)はそれぞれの投稿において、現実世界とデジタル世界のあいまいさ、そしてそれによってガバナンスが直面する特有の課題について述べた。ハンフリーズは、この現実世界において爆発的に増大する表象とつきあうことは、難しい仕事ではあるけれども、事実を探求したり証拠を集めたりといった言語ゲームと本質的には異なるものではない、と指摘する。

ジアは、広範囲なデータソースは規制に必要とされる枠組みに影響すると指摘し、データを遺伝子データ(個人の生体データ)、センサデータ(端末から収集されるもの)、行動データ(取引データ、コミュニケーションデータ)と政府データ又は公開情報という4つの明確なデータ源に分類した。ジアは、「法規制の技術、原理そして制度をどのようにして発展•改善するべきか」と問題を提起した。ズー やゾーと同じく、ジアは規制を進めるための革新的な「インセンティブ•メカニズム」を主張した。

制度や構造を考慮する前に、シャーロット•エプスタイン(Charlotte Epstein)(シドニー大学)は「最初にデータが生成されるプロセス」という「上流」に目を向ける必要がある、と強調した。 

データガバナンス固有のトレードオフとは?

経済学者キョン=フン•カン(姜京勋)(東国大学校)は、データガバナンスについて考える際の個人データ保護と競争方針の対立を重要視した。コーネル大学の計算機科学者フレッド•シュナイダー(Fred Schneider)は、暗号化やセキュリティーと監視など「政府が重要とする方針」との間に生じる二律背反を主張した。平野晋は、日本の総務省における人工知能に関する委員会のコアメンバーの一員として、透明性と「トレーサビリティ」に関するガイドラインの整備について政策立案者としての視点を論じた。彼は透明性の意義を世界的に確定する必要性、および「適切なレベルの透明性」と人工知能がもたらすベネフィットとの相対的な兼ね合いについて述べた。

韓国とオーストラリアのフォーラム参加者は、 データの仮名化を規制するために両国で行われている法的取り組みについての考えを共有した。ギジン•ヤン (梁奇珍)(全北大学校法学部)は、データ仮名化について今韓国で議論されていること 、「データプライバシーの保護と効率的なデータ利用の釣り合い」、そしてデータの機密性と利用に関する世界標準の必要性について述べた。ベネット・モーゼズは、オーストラリアでも仮名化は議論されていると述べた。モーゼズは「リスクに基づくアプローチ」によるディスクロージャーに関する問題を提起した。ヤンは、リスクに基づくアプローチはイニシアチブと責任の双方に対応する点で期待できると同意した。

文化人類学者のジェローム•ウィティントン(Jerome Whitington)(NYU)は、グループに研究データの保護に関する課題を考えるよう強く促した。彼はコミュニティ•オーガナイジングおけるデータの重要性を重視し、「重要なデータはどれか、誰が利用するのか、弱点があるかどうか」についてもっと質問するべきだと提案した。

ジョーンズは結論として3点の繰り返されるテーマに触れた:

  • 「データの作成、動き、そして利用により一般市民と消費者の役割が変わり、自覚や理解があまりない状態で意思•取引決定の過程に関わっていること」
  • 「新たな形の競争や異なるデータメカニズムを試すなかで変化していく政府や企業のレパートリー」
  • 「『データ•エコノミー』もしくは『データバース(dataverse)』における知的、政治的、倫理的な介入の規模やポイントの識別に関する問題」

参加者の多くは、データの機密性と透明性の管理に関する世界標準が必要だと強調した。グローバルデータガバナンスに関するさらなる探求や研究は、Meridian 180の国際作業部会や今後のフォーラムでの議論で取り上げられる予定である。

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